青と赤と甘い錆。
「・・・どうして、ここにいるの?」
予想外のことにファルロスは驚きの声を上げた。
そこはいつもの彼の部屋。
全てのモノが活動を止める流れる筈のない時間、
いつもの様に。
踊る様に。
闇の中から辿り着いたその場所に、
今はいない筈の”彼”はいた。
「ファルロス・・・。」
突然の少年の訪問に(といってもいつも突然だけど)、
少し驚いて僕はベットの上で手にしていた本を落とした。
その途端、左手の指先に鋭い痛みを感じる。
「イッ・・・・・。」
思わず上げたその声に、音も無く近づいて来たファルロスは
咄嗟に押さえた指に滲む血を捕らえた。
「切ったの?」
「・・・新書だからね。切れるんだよ。」
そう言いながらその指を唇に持っていく。
「そっちこそ、どうしたの?
また、何か伝えなきゃいけない事でも思い出した?」
「あ、ううん。そうじゃないよ。
君こそ、どうしたの?
今日はタルタロスに行ったんじゃなかったの?」
「ああ、それは・・・。」
そう、本当はタルタロス探索に向かう予定だった。
というか、向かったんだけど。
途中で風花が風邪を引いていることに気付いて。
風花は大丈夫だと言ったけど、そのまま戻って来たのだった。
「予定変更・・・・・て、もしかしてファルロス・・・。」
「何?」
「・・・今までも僕たちがタルタロスにいる間
ここに来てたの?」
「あぁ・・・うん。」
「・・・・・・・・!」
「・・・本当は、あそこにも一緒に行きたいんだけど・・・やっぱり迷惑でしょう?
だから、君が無事に帰って来るのをここで待っていようって・・・もしかして、これも迷惑?」
少し不安そうに見上げる青い瞳から、視線が外せなくなる。
「・・・・・迷惑ではないけど。」
「そう、よかった!」
嬉しそうなその笑顔が。
ファルロスが自分を心配してくれているらしいことが。
どうやら僕は嬉しいらしい。
そういえば、こんな風に誰かが待っていてくれるなんて、
それが嬉しいなんて・・・あれ以来なんじゃないだろうか?
―――――それが、不安でもあるんだけれど。
「・・・・・美味しいの?」
「は?」
「だって、ずっと舐めてるから・・・。」
そう言われて、ずっと唇にあてていた指を離した。
するとすぐそこから血が溢れてくる。
どうやら思ったよりも深く切ってしまったようだ。
流れ落ちそうになるそれを再び自分の唇で受け止めると
それを見ていたファルロスはもう一度聞いてきた。
「血って、どんな味?」
「どんな味って・・・。」
知らないのか?と口にしようといて止めた。
僕の知っている限り、ファルロスが血を流すとは思えなかったから。
「・・・雨の日の鉄棒の味?」
「何それ!」
そんなに可笑しな言葉だったのか。
ファルロスは、あははと笑う。
「・・・そんな風に言ってた人がいたんだ。」
「ふふっ、君は雨の日の鉄棒を食べた事があるの?」
「・・・・・ない。」
「だろうね。・・・だったら、やっぱりこうするのがはやいよねぇ?」
「・・・・・・・・!」
そう言いながらファルロスは僕の手を取ってその唇にもっていった。
それは思っていたより冷たくて。
まるで死体の様に冷たくて。
「・・・美味しい?」
こんな言葉しか浮かばない自分にちょっと落ち込んだけど
ファルロスは満足したようだ。
「う〜ん・・・不味くはない、かもね。」
そう言うファルロスの唇は僕の血に染まっていて。
青い瞳と赤い唇に目が眩む――――――。
「・・・・・君の唇も、真っ赤で美味しそうだよ・・・?」
まるで僕の心を見通しているように、
ファルロスは冷たいそれを僕のそれに重ねた。
それは甘い錆の味がした―――――。
・・・そこはかとなく犯罪かも。。。;
この後
ファ「ごちそうさまでした。」
主「お粗末さまでした。」
とか言ってそう。。。腐
「雨の日の鉄棒」と言ったのは西原理恵子さんでした。(c)毎日かあさん・・・だったと思う。笑
他の遊具でもいいけど・・・やっぱり”鉄棒”が笑えます。
主人公が鉄棒食ってたら笑えるなぁ。