「灰かぶり姫」
ピピピピピピッ
携帯のタイマー音に浅くまどろんでいた意識が呼び戻される。
重たい瞼をゆるゆると持ち上げると、見慣れない天井に「え、と・・・ここ何処だっけ?」と鈍行の思考でこの数時間のことを思い返して、「ああ・・・綾時の家だ」と認識して溜息をついた。すると僕の隣で「うう〜ん」と小さく唸りながら綾時は幸せそうな顔で僕の方にモゾモゾと身を寄せて来た。
のろのろと重い身体を持ち上げて「ピピピピピピッ」と鳴り続ける携帯に手を伸ばしたところで綾時もはっきりと目が覚めたようだ。ぼーっとした顔で携帯を止める僕の方をしばらく見た後、
「・・・ああ、もうそんな時間なんだね」
と寂しそうな顔をする。まるで置いていかれる迷子の子犬のような顔で見ている綾時の視線を振り払うように僕はベットから起き上がった。
「ん。帰る支度しなくちゃ・・・」
綾時とこういう関係になってから、僕は寮の門限に間に合うように携帯にタイマーをかけるようになった。
そうしないと、困ったことにまったく気づかないのだ。時間の経過に。
もし僕がSEESに所属してなければここまで時間を気遣ったりはしないと思うけれど、こればっかりは仕方ない。たとえその日タルタロスに向かわなくても、影時間までに寮に戻っていないと色んな意味で大変なことになるのは目に見えている。特にアイギスあたりが。綾時はそんな僕を「真面目だね」とか言っているが、説明出来ないのでそう思わせておくことにした。
「君といると時間があっと言う間に感じるよ」
淡々と帰る準備を進める僕をベットの上で眺めつつ綾時がまた生温かいことを言っている。
「そう?なら、綾時は幸せなんだろう。よかったな」
「そうだね・・・!君はどう?はやく感じない?」
「・・・・・・普通」
そう答えた僕に綾時は「え〜〜〜〜!」と不満の声を上げているが、ここで肯定するようなことを言うと、こっちも後々大変そうなのでそれ以上何も言わない。というか、タイマーをかけているという時点でそのことに気づくべきだ。いや、もしかしたら気づいていて僕に「そうだね」と言わせたくてわざと聞いているんじゃないかと疑ってしまう。
さっと身支度を整えた僕を恨めしそうに見ていた綾時は、僕と視線が合うとふっと微笑んで再び生温い言葉を吐いた。
「12時までに帰らないといけないなんて、まるでシンデレラみたいだね・・・!」
「・・・・・・」
どうしてこの男は通常時に戻るとこんな生温い言葉が次から次へと浮かぶんだろう?ことの最中はむしろ見境がなくなって、本当に僕のことが好きなのだろうかと疑いたくなるぐらいなのに。もう一度溜息をついて制服の上にコートを羽織った僕に、綾時は起き上がって文句を言う。
「ちょっ・・無視されるととても辛いんですけど!何でもいいから一言返事を返してよ〜!“うるさい”とか“気持ち悪い”とかでもいいから〜!」
「うるさいよ。そして、気持ち悪いよ」
「そのまま返さないでよ・・・!」
望むがまま返事してやったのに、綾時は口を尖らせて拗ねている。まぁ、口は尖らせているがご機嫌な様子だ。そりゃそうだろう。あれだけやりたいようにやったんだ。これでまだ足りないとか言われたら本当にこっちが壊れる。そう考えるとあの尖らせてる口を摘み上げてやりたい気分になったが、そうすると今着たばかりの服をまた引ん剥かれそうなので、足止めを食らわないうちに退散しようと寝室の扉を開いた。
「・・・じゃあな」
「僕が君を探し出せるように、ちゃんと“ガラスの靴”を置いていってね!」
「!」
嬉しそうにひらひらと手を振って笑ってる綾時が視界の隅に入ったけれど、これ以上こいつを相手にしてたら本当に熱が出そうだ。
「・・・・・・はいはい。せいぜい頑張って探し出してくれ、皇子様」
そう言って少し乱暴に僕は部屋を後にした。
外の空気は刺さるように冷たい。耳がスースーする。
ヘッドホンを置いて来るんじゃなかった。
☆☆☆
あとがき
これは綾主事後というか???
まったく甘くはないですね。ちゅーぐらいしろよう!笑
主綾の様にもとれますが最中は綾時さん鬼畜なんですよ、きっと。
そして主人公さんはツンデレでもないんですよ。
大人な対応なんです、きっと。
でも、最後ヘッドホンとか置いてきちゃうとか、萌えませんか?ませんか。
綾時さんは思考回路が乙女です。笑
☆ニュクス関連の人たち(アイギスも含め)は乙女回路を使用しています。
☆12時になると魔法が解けるのは主人公さんではなく綾時さんです。
☆逆設定にすると綾時さんが痛い人になりました。一人劇場。
綾「12時までに帰らないと魔法が解けちゃうんだよ!」
主「はあ・・・?」