本当はヨハンに聞きたい事がたくさんあった。 「あの後、ヨハンとユベルはどうなった?」とか。 「異世界に向かった俺達はどうなった?」とか。 「どうやってあの異世界から戻って来た?」とか。 「・・・・・・ヨハンは今、俺のことをどう思ってる?」とか・・・・・・。 俺が聞けばヨハンは話してくれるだろう。けれど、聞きたいと思うと同時に湧き上がる不安や恐怖に、俺自身どうしたいのかわからなくなってそれを口にすることができなかった。 これは逃避だ。俺らしくない。そう思うのに舌が動かない。言葉が出ない。 少しだけ。あと、ほんの少しだけでいいから、そのことから目を瞑っていてもいいだろうか?何も知らずにヨハンの側に居ることが許されるだろうか? 誰にともなく訪ねた俺の言葉は闇に溶けた。 turn.8 今の俺にわかること 「やっと終った〜!」 目を覚ましてから検査漬けになっていた俺は、ようやく検査を全て終らせて病室のベットに勢いよく腰を下ろした。 「身体はなんともないって何度も言ってるのに・・・・・・倒れた原因を調べる為だってのはわかるけどさ〜立て続けに検査される身にもなって欲しいぜ〜」 「まぁ、そう言うなよ。これで身体の方は大丈夫だってわかって俺も安心したし」 文句を垂れる俺に、検査の間もずっと側にいてくれたヨハンが安堵の表情を浮かべるのを見て、それ以上文句が言えなくなる。 「そりゃそうだけどさぁ〜・・・・・・」 「けど、しばらくは大人しくしてろよ。倒れた原因がはっきりしないことにかわりないんだからな」 ヨハンにそう言われて、再び俺の中で心がざわつきだした。それは目が覚めてからずっと気になってることだった。 「倒れる直前にさ。何か見た気がするんだ」 「何かって?」 「・・・・・・それが全然思い出せない」 思い出せない過去だけでもお手上げ状態なのに、今のことまで思い出せなくて苛立ちばかりが募る。 「なんか、すげー大切なことだった気がするのに・・・・・・俺、確かに前から頭悪かったけどさぁ〜、これも事故に遭った後遺症ってヤツかな?それともただ単に倒れたせい?」 「どうだろうな。それが倒れた原因だとしたら、その可能性もあると思うけど・・・・・・今の時点じゃ何とも言えないなぁ」 「喉元まで出て来てるって言うの?こうさ、突っかかってる感じで・・・・・・うう〜、なんか気持ち悪いぜ〜」 頭を抱えてうんうん唸ってると、いつもの様にヨハンはぐしゃぐしゃと俺の頭を掻き回した。 「無理するな」 「ん・・・・・・」 あれからヨハンは俺を気遣ってずっと側に居てくれた。少しばかり申し訳なさも感じるけど、同時にとても嬉しいとも思ってる。 目を覚ました時もしヨハンがあそこに居なかったら?と、その時の自分を想像して正直ゾッとした。情けないけどきっと酷く取り乱して、周りに迷惑をかけてしまっただろう。何よりヨハンを失うかもしれないという不安が、あの時点で消えたことでどれ程救われたかわからない。 何より、まるで二つの時間を同時に生きているような感覚に混乱しそうな俺を、今と繋いでくれているのはヨハンだった。ヨハンにはいつも助けられてばかりだ。俺もヨハンの力になりたい。今の俺にヨハンの為にできることってなんだろう? 柄にも無くしばらくそんなことを考えてみたけれど、良い案なんてひとつも思い浮かばなかった。それどころか考えたくないことばかり浮かんで来る。聞きたいけれど聞けないことだ。そして再び不安や恐怖でいっぱいになって何も考えられなくなる。なんでこうも思考が上手くまとまらないのだろうか。自分の頭の悪さにがっかりする。 夕食までの時間を持て余した俺は、考えることも放棄して病室に設置されている棚に視線を移した。そこには先日見舞いに来てくれた、影丸のじーさんと隼人とペガサス会長が用意してくれたデッキとディスクが置かれていた。 「なぁ〜ヨハン、デュエルやらね?」 検査漬けから解放されたことは喜ばしいけど、勝手なもんで何もすることがないことも苦痛だ。こんな時はデュエルに限る。デュエル中は余計なこと考えなくて済む。ベッドサイドで俺には読むことが出来ない外国語で書かれた、何やら難しそうな本を読んでいたヨハンは、少しの間考え込むとその分厚い本をパタンと閉じて言った。 「・・・・・・・・・・・・やらない」 「ええ〜!?デュエルしようぜ〜!」 あのヨハンが俺とのデュエルを断るなんて!予想外のヨハンの反応に俺は慌てて縋りついた。 「せっかく隼人と影丸のじーさんとペガサス会長が、俺の為にHEROデッキ用意してくれたんだぜ?俺さ、このデッキ使うなら一番最初はヨハンがいいって思ってたんだ!」 「十代がそう思ってくれたのはすげー嬉しいけど、今はデュエルしない。特にディスクとHEROデッキを使ったデュエルはな」 「なんでだよ〜!せっかくディスクあんのに!使わねえの勿体無いねーじゃん!デュエルしようぜデュエル〜!!!」 「絶対にやらねぇ!」 「デュエル〜デュエルしないと死んじまう〜!デュエル〜!」 「デュエルゾンビとはやらねー」 頑なに拒否するヨハンに俺も意固地になる。できないと思うと益々やりたくなる。 これまでヨハンが自分の本当のデッキを使わなかったのは、俺が自分のデッキを持ってなかったからだろうなと思っていた。だからきっと俺が自分のデッキを取り戻したら、ヨハンと本気のデュエルができるんじゃないかって期待していたのだ。なのに、ヨハンは俺とデュエルしないと言う。デュエルしないデュエリストなんていない。おかしい。 どうにかヨハンとデュエルできないものかと、ついさっき考えることを放棄した頭を再びフル回転させようとしたところで、いつもヨハンの側にいたルビーの姿がないことに気付いた。思い返してみれば、俺が事故から目を覚ましてからずっとその姿を見ていない。強烈な違和感に襲われながら、忘れていたとはいえ、そんなあたり前のことに今になって気付いたことに愕然とする。俺の頭は俺が思ってる以上に問題があるのかもしれない。 「・・・・・・ヨハン、ルビーはどうしたんだ?俺が目を覚ましてから一度も姿を見てない。宝玉獣達の気配も感じない。なんでここに居ないんだ?」 「ああ、言ってなかったけ?今、メンテナンスの為にペガサス会長の所にデッキを預けてるんだ。ま、そういう訳だから、宝玉獣デッキでデュエルは物理的にも無理なんだな」 俺とデュエルができない理由は、蓋を開けてみれば何てことないだった。世界にひとつだけのデッキなのだ。メンテナンスにペガサス会長が直接関わることも当然だろう。となると、たとえ俺が泣いて頼んだってヨハンとデュエルはできない。 「なんだよ〜。そうならそうと、先に言えよ」 「まぁ、今はたとえ俺の手元にデッキがあっても、お前とはデュエルしないけど」 落胆と安堵で力が抜けた俺に、ヨハンは念を押すように付け加えた。俺にはそれを黙って聞き過ごすことはできない。ヨハンとデュエルできないなんて何の拷問だろう。手元にデッキがない以外に、デュエルができない理由なんてまったく予測もつかなくて、「だからどうしてだよ〜」と泣き付いた俺に「十代はさ」と、ヨハンは前置きするように言葉を一度区切ってから言った。 「十代はさ、精霊との絆が誰よりも強い。HERO達との絆はもちろん、他の精霊達ともな」 「うん?それがデュエルしないことと関係あるのか?」 「十代が目を覚ましてからの検査でも器質的な問題がみられないところをみると、今の記憶の混乱も、もしかしたらそういったことに関係しているのかもしれない」 以前からあったことだったけれど、たまにヨハンの話は突飛が無かったり、難しい日本語を使って俺には理解できない時がある。 「きしつ・・・・・・て、なんだ?」 「脳に直接の問題はないってこと。つまり、直接脳にダメージがあって記憶の障害が起きてる訳じゃないってことだ」 「それって・・・・・・どういうことだ?」 「精霊との関わりが強いことが原因で、記憶を失った可能性があるってこと。だから、もしかしたらたとえお前自身がこれまで共に戦ってきたデッキでなくても、それを模したデッキでデュエルをすることで、何かしら問題が起こるかもしれない・・・・・・例えば失くした記憶を取り戻すこともあるかもしれないってこと」 すぐに理解できない俺に呆れず説明してくれたおかげで、ようやくヨハンの言いたいことはわかった。「まぁ、これは医者じゃなくて俺の見立てだけどな」とヨハンは最後に付け加えるが、俺にはヨハンの仮説を否定することができなかった。もちろんその見立てってヤツが正しいという証拠がある訳じゃないし、むしろ勘に近いものだと思う。ただ、俺は自分の勘ってヤツを信用していたから、それ以上デュエルをせがむことができなかった。確かに今ヨハンとデュエルして、一気にいろいろ思い出すのだとしたら・・・できればそれは、俺が失くした記憶の全てを、どうしても思い出したいと思った時の最終手段にしたい。 「十代がそれを承知の上でHEROデッキでデュエルするっていうんなら、俺が相手になってやるけど」 「そっか・・・・・・そうだな、ヨハンがそう言うなら・・・・・・」 念を押すように確認して来るヨハンに、俺は大人しく引き下がるしかない。思い出した記憶の続きをヨハンに訊ねることすらできない今の俺に、それでもデュエルしたいとは言えなかった。 すっかり意気消沈してしまった俺を見かねたのだろうか、ヨハンは立ち上がると、ベッドサイドの棚にしまってあったカードの束を取り出した。 「俺が持って来たカードの即席デッキでなら、デュエルしてやるよ」 「!」 「これを使ったデュエルは問題なかったしな。大丈夫なんじゃないかな」 「ヨハン・・・・・・!」 そう言って穏やかに笑うヨハンに、俺もつられて笑ってしまう。ヨハンは本当に頼りになるヤツだ。頼りになり過ぎて、ちょっとズルイと思ってしまう程に。 それから数日、倒れたことが嘘だったような穏やかな日が過ぎた。失くした記憶をそれ以上思い出すことはなかったし、なによりヨハンがずっと側にいてくれる。実戦はできなくても、デュエルについていろいろアイデアを出し合ったり、新しいコンボを考えてみたりするだけでも楽しい。こんな日がずっと続けばいいと思う。思うけれど、実際それは無理な話だ。 「宝玉獣デッキの良さを引き出せる戦略ってのが、他にももっとあると思うんだけどさぁ〜」 「そうだなぁ〜。いっそ、このカード入れて・・・・・・」 お互いのデッキを頭に浮かべながらテーブルのカードを手に、ああでもないこうでもないと話していた時だ。ヨハンの携帯が鳴った。さっとズボンのポケットから取り出して確認する。 「わりい」 「いいって」 わざわざ俺に断りを入れて席を立つと、ヨハンは病室から出て行った。たぶん病棟のロビーでかけ直すつもりなんだろう。確かに病室で携帯を使うのは禁止されているから、当然といえば当然だけれど、変なところ真面目だよな〜と思いながらも、日に日に俺の中で申し訳なさが大きくなっていた。 俺と一緒にいる間にも、ヨハンには引っ切り無しに携帯電話が鳴っていた。携帯だけじゃない。病室に備え付けられている電話にもだ。殆どが英語やらヨハンの母国語らしい言語で、俺には聞き取る事ができなかったが、ヨハンがいろんな人から頼りにされていることはわかった。考えてみれば俺の側にいるために、ヨハンは手伝っていた研究を途中で中断してきているのだ。 確かに今の俺は他人から見て頼りないのかもしれない。自分でも何時になく精神不安定だって認識もある。でもヨハンと一緒にいたいからって、それを口実にはしたくないし、ヨハンを取り巻く様々な事情から目を背け続けることもできなくなっていた。 「これ以上は迷惑だよな・・・・・・」 ヨハンのことを思えば、その優しさに甘えてばかりはいられない。 再びそう強く思うのに時間はかからなかった。 その晩、一眠りした俺は隣の部屋から人の動く気配を感じて目を覚ました。ベッドサイドに置かれた時計を見ると深夜2時を過ぎを指している。そっと隣の部屋を伺うと、思った通り持ち込んでいたノートPCを前に、真剣な眼差しのヨハンがいた。たぶんヨハンが協力している研究のことで頭を悩ませているのだろう。昼間にも何度も連絡があったし、その時のヨハンの様子は、研究があまり上手くいっていないことを伺わせた。 しばらくその様子を眺めていたけれど、こそこそ覗いていることに罪悪感を覚えて、俺はわざとらしく扉を開いてヨハンに声をかけた。 「・・・・・・ヨハン、まだ起きてんだ」 「十代・・・・・・起こしたか?」 「いや、俺は便所」 「そっか」 本当はそんなつもりなかったが、思わず出た言葉に俺は一度その場から立ち去り、便所で「やっぱ、これ以上は迷惑だよな」と自分に言い聞かせて部屋に戻ると、ヨハンの座っている向かい合ったソファーに腰を下ろした。ヨハンもそれを咎めることはなかった。 「目、覚めちまったか?」 「ん、昼も思いっきり寝てるしな」 「・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 いつもなら何でもない沈黙が辛い。ヨハンは無理にその沈黙を破ろうとはせず押し黙ったままだった。ヨハンは聡いから、いつもと違う俺の様子を察知して話し出すのを待ってるのだろう。その沈黙に耐え切れなくなって俺は話を切り出した。 「・・・・・・なぁ、ヨハン。俺は大丈夫だぜ?」 「?」 「だからさ、そろそろ戻っていいぜ。いや、戻るべきだ」 「十代・・・・・・」 「ヨハンは優秀だからさ、今もそつなくこなせてると思うけど、俺の所為で研究だって途中で放り出して来てるだろ?それだけじゃない。宝玉獣のデッキがメンテナンス中だとしても、デュエリストとしての活動もできてない。俺はさ、ヨハンと一緒にいられて嬉しいけどさ・・・・・・やっぱりそれってダメだと思う。ヨハンはみんなに必要とされてんだ。なら、それに答えなきゃな!だからさ、」 「十代!」 これ以上気を使わせないように。できるだけ明るく振舞いながら捲くし立てる様に喋る俺を止めると、ヨハンは立ち上がり俺の隣に座った。その距離の近さに変に意識してしまう。それが伝わってしまったのか、いつもの様に俺に伸ばそうとした手を触れる直前で止めて、思わず目を背けて俯いた俺を覗き込みながら言った。 「もしかして、俺が居るの迷惑か?」 「まさか、そんなわけない!」 「なら、どうして急にそんなこと言うんだよ」 「だってさ、俺はやっぱ嫌なんだ・・・・・・俺はヨハンの枷になりたくない。俺の所為で、」 「十代」 再び言葉を遮られて恐る恐るヨハンを見ると、その表情は悲しげだった。 「“俺の所為”は禁止な。そう言われる度にこっちが辛くなる」 「う・・・・・・ごめん。でも、」 それでも俺にも譲れないものがある。少なくともヨハンが様々な人から必要とされていることを俺は知っている。だからこそ俺がそれを妨げてしまうことだけは避けたかった。そのことをもっと上手く伝えることができれば良かったのに。ヨハンの顔を見ながらそんなことを思っていると、一度は直前で止まったヨハンの手が再び伸びてきて、優しく頭を撫でるとゆっくり頬に触れる。 「俺は自分の意思でここにいるんだ。俺がお前の側にいたいからいるんだ。もし十代が俺に側にいて欲しくないって言ったとしても、俺は今ここから離れるつもりはまったくないぜ」 「それは・・・・・・俺はヨハンにしかできないことして欲しいんだ。お前言ってたじゃないか。“人間と精霊の架け橋になりたい”って。俺には難しくって全然わかんねえけど、今、手伝ってる研究だってその為のものだろう?だったら、」 「確かにここにいることで、疎かになってることがあるのは事実だ。けど、俺にも優先順位ってのがある。今はここにいることが俺の中では一番なんだ。十代のことを何より一番に考えたいんだ」 確かめる様に頬に触れながら、ヨハンは祈るように言った。 「俺はお前が元気ならそれでいいんだ。本当にそれだけでいいんだ。たとえ十代が俺のこと忘れちまっても構わない」 「そんなの俺が嫌だぜ!」 一度はすっかり忘れていた俺が熱弁しても、信憑性がまったくない気がして「そりゃ、思い出す度にあんな思いするのは勘弁して欲しいけど、ヨハンのこと忘れるなんて・・・・・・」と、言い分けがましく続けた言葉が口篭ってしまうのが情けない。 「わかってる。俺だって十代がこのままだとは思ってない。けどさ、お前が苦しむのは御免だ。だから無理して欲しくないし、俺が今十代にしてやれることは全部したいんだ」 「ヨハン・・・・・・」 そう言うヨハンは本当に幸せそうだった。さすがにここまで言われて思い違いってことはないよなと思い直す。もしかしたら俺の一方的なものだったらと怖気づいて確かめられなかったけど、今なら――――――そんな気持ちになって、期待と不安の中訪ねた。 「ひとつ、聞いていいか?」 「なんだ?」 「ヨハンは今、俺のこと・・・・・・どう思ってる?」 俺にとって異世界でのことはつい最近の出来事だ。だが現実にはDAを卒業してからすでに数年経っている。あの時は「好き」だったかもしれないけど、ヨハンの気持ちはすでに変わっているかもしれない。俺が思い出せないだけで、状況は変わってしまっていてもおかしくない。今、側にいてくれるのはただの友情ってやつかもしれない。そうなっていてもおかしくない。考えれば考えるほど時間の経過と記憶の空白が邪魔して、記憶を取り戻した後のキスもそのまま受け取ることを躊躇してた。けど・・・・・・。 まともにヨハンの顔を見ることができなくて、俺は俯いたままだったけれど、少しの沈黙の後ヨハンが笑った。 「・・・・・・どう思ってると思う?」 「茶化すなよ!」 「茶化してなんかないぜ?」 俺は余裕なんてなくて必死だったけれど、その場を包んでいた空気が緩んで、すべて俺の杞憂だったとわかる。ヨハンの気持ちが今も変わってないといいな、という小さな期待が確信に変わる。 「十代はさ、俺がなんとも思ってない相手に、側にいたいとかそういうこと言うと思うのか?」 「!・・・・・・思わねえ」 そう答えた俺の唇にヨハンのそれが触れた。 「今んじゃ、よくわかんねー?」 何処かで聞き覚えがあると思ったら、それは異世界の月明かりの下でヨハンに言った俺自身の言葉だ。なんだか楽しくなってきて、その挑発に乗ってみた。 「わかんねーって言ったら・・・・・・ヨハンはどうする?」 俺の言葉に目を丸くしたのはほんの少しで、ヨハンはすぐに悪戯を思いついた子供みたいに笑ながら言う。 「そうだなぁ〜、今ここにお前と俺がいるってことを、これでもかってぐらい思い知らせてやるよ。十代に『わかったからもう勘弁してくれ〜!』ってサレンダーさせてやる」 「ぷっ・・・・・・マジで〜?」 そう言って二人で笑い合う。 問題は全然解決してないし、やっぱりヨハンはヨハンを必要としてくれる人の期待に答えるべきだって思う。けど今は。今だけでいいから。ヨハンの側にいることは、想いを交し合うことは許されるよな? 互いの存在を確かめ合う様に、浅いキスが交わすたびに深くなっていく中で、そう願った。 |
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