ヨハンは手を引いて俺を引き寄せると、一枚のカードを<破滅の光>に翳した。 「しばらくそこで、おとなしくしてろ!」 すると中空に数本の光の剣が現れて<破滅の光>のまわりに突き刺さる。強烈な音と振動が身体に伝わって、それがソリッドビジョンではないとわかった。どうやらこの空間に満ちていているデュエルエナジーのせいで具現化しているらしい。 『チッ、“光の護封剣”か・・・・・・』 「さあ!行くぜ、十代!」 「え、ちょっ・・・・・・!」 ヨハンに手を引かれるままユベルがいると思われる部屋に飛び込んだ。そこは研究室のひとつなのだろう。机の上には何に使うのか想像もつかない実験道具と思われる物や、資料なのだろう本やファイルが無造作に積み上げられていた。その中をヨハンに引っ張られて足早に進む。 「あれは一時凌ぎにしかならないからな。できるだけはやくここから出たほうがいい」 「ヨハン、」 「わかってる。お前がここに来たってことは、全て思い出したんだろう?俺のことを疑ってるのもわかる。当然だ」 「・・・・・・・・・・・・」 ヨハンの言う通りあれぐらいで<破滅の光>の足止めができるとは思わない。きっとすぐに追いつかれてしまうだろう。それでもヨハンには聞かなきゃいけないことがたくさんあって、本当は今すぐにでも訊ねたかったのに、力強く握り締められたヨハンの手が温かくて、思いもよらずにどんどん湧き上がる気持ちが、ヨハンへの疑いを飲み込んでしまった。 turn.24 ホワイトアウト 部屋の奥に続くいくつもの扉をくぐった後、それまでより広いフロアに出ると、聞きなれた脈打つような起動音が響いていた。俺が囚われていた場所に近いのだろう。フロアの造りや置かれている機械も共通のものだと感じた。今思い出してもあの時のことは苦痛でしかないのに、この音には慣れてしまったのか妙な懐かしさもあって複雑な気分になる。それにD・D・Gに近いからだろうか、その空間にはこれまで以上に濃密なデュエルエナジーに満ちていて、強すぎる力に酔ってしまいそうだった。そんな俺の手を引いて、ヨハンはフロアの一角にあったガラスケースの前に連れて行く。 「十代が探してたのは、こいつだろ?」 「ユベル・・・・・・!」 光の差し込むガラスケースの中に、俺と別れた時の黒い卵のような殻に封じられたままのユベルの姿があった。ヨハンはその中から丁寧に取り出すと俺の手に乗せる。 「ここには余るほどデュエルエナジーがある。こうやって自然に具現化するほどに。だからユベルも癒すことができるんじゃないかと思ったんだけど、そいつ偏食でさ。単なるデュエルエナジーじゃなくて、心の闇じゃなきゃイヤだって。俺の力不足だ、すまない」 ヨハンはそう言ったが、手の中のユベルは明らかに俺と別れた時より回復し安定していた。今は深く眠っているようで、寝言で『・・・・十代の、バカァ・・・』と叱られた。この様子なら目を覚ませば、ユベル自身の力で封印を破ることもできるだろう。 「いや、十分だ。本当によかった・・・・・・」 一度は今生の別れってヤツも意識した。それがこうやって再会できたのだ。感謝こそすれ責めるのは筋違いってもんだろう。 「ヨハンがユベルを守ってくれたのか?」 「いや、ユベルを守ったのは十代の力さ。<破滅の光>には手出し出来なかったんだ。そうでなきゃここには連れて来れないよ」 「そっか・・・・・・相棒」 俺が呼びだすとハネクリボーは姿を現した。何もしなくても具現化して実体を伴った相棒の姿に思わず頬が緩む。そんな相棒に俺は手にしたユベルを差し出した。 「ユベルを頼んでいいか?」 『クリクリ?』 「今、俺の中は・・・・・・光に荒らされちまってる。随分回復しているとはいえユベルにはよくない。だから<破滅の光>を追っ払うまで・・・・・・頼む」 『・・・・・・クリクリ!』 少し不安そうにしていたけれど、ハネクリボーは俺の意を汲んでユベルを受け取ると、以前と同じように自らの身体の中に取り込んだ。そこへ、自動で開いた扉の中から「にゃあ」という鳴き声と共にファラオが入って来た。 「ファラオ!」 『ふぁらお〜!』 その姿を見つけて、これまで俺の頭の後毛の中にずっと隠れていた大徳寺先生が飛び出し、『やっぱりファラオの側が一番ホッとするのにゃあ〜』と、さっそくファラオの口の中に飛び込んだ。 ファラオと大徳寺先生の姿に自らとユベルを重ねつつ、ファラオが今し方出て来た隣の部屋にふと視線が行く。理由はわからなかった。けれどどうしても気になって、心の赴くまま立ち上がりその部屋に向う。 「十代?」 声をかけてきたヨハンにも答えず、俺はその扉をくぐり息を飲んだ。 「ここは・・・・・・!」 そこは俺が<破滅の光>に囚われ、ずっと閉じ込められていた場所だった。視線の位置や高さの違いで一瞬わからなかったが、身体にまで響いてくるシステムの起動音や、まわりに置かれている機器はあの時と同じままで、自然と向けられたその広い空間の一番奥の、システムに囚われている者の姿を捉えて驚愕する。 「レインボー・ドラゴン・・・・・・!!」 あの時の俺と同じように、そこには具現化した虹龍が光の鎖に縛りつけられていた。しかし<破滅の光>に操られているわけではないらしい。その身体に並んだ宝玉は以前と変わらない美しい七色の光を放っていた。 予想もしなかった光景に、息も忘れて立ち尽くしていた俺にヨハンが言った。それはこれまで聞いたことがない冷えた声だった。 「・・・・・・お前には、知られたくなかった」 「何で・・・?どうして、こんな・・・・・・っ!?」 「覚えてるだろう?あの時、死を前にしたお前を救う術は俺にはなかった」 記憶を取り戻したばかりの俺にとって、それは生々しい感触を伴ったものだ。強い血の味と臭いと、ヨハンの温もりと、闇に溶けていく意識・・・・・・。 「<破滅の光>はお前の魂を身体に縛り付けることはできたけど、その傷を癒すことはできなかった。当然だ。光と闇は相反する存在。拮抗している時は互いを強めるとはいえ、闇が光を放つことができないように、光に闇を産み出すことはできない。だから、このシステムを利用することにしたのさ」 怒りからか、恐ろしさからわからない。けれどヨハンの言葉に俺は身体が震えるのを止めることができなかった。 「俺を生かす為に、レインボー・ドラゴンを差し出したのか!?」 「そうだ」 「!・・・・・・・・・・・・歯食いしばれっ・・・・・・!」 悔しさとか、悲しさとか。それ以上に、言葉では表現しきれないものが爆発した。そんな衝動の赴くまま俺は拳をヨハンの頬に叩き込んだ。ヨハンはそれを避けようともせず、まともにくらって後ろに倒れこんだが、すぐに上半身を起こし血が滲んだ口の端を甲で拭い、俺の後ろで光の鎖で磔にされた虹龍に濡れた瞳を向ける。 「・・・・・・・・・・・・俺は・・・・・・俺も、十代を死なせたくなかった。宝玉獣達もそうだ」 「俺はっ・・・・・・俺は、こんなこと・・・・・・!」 「十代が望まないことはわかってた。十代は誰かが自分の所為で傷ついたり苦しんだりするのが何よりも嫌なんだよな。けど、これは俺が望んだことだ。お前には何の責任もないし、気に病むこともない」 勢いにまかせてヨハンを一発殴ったことで、自分の中のわだかまりも吐き出されたのかもしれない。沸き立ったものが急速に冷えて、後に残ったのはどうしようないやるせなさだった。 「だからヨハンは、ずっと黙ってたんだな・・・・・・もしかして、俺のデッキがどうなったのかも知ってるのか?」 「ヒーロー達は別の場所に封じられている」 封じられているというからには、デッキが失われてしまったわけではないのだろう。そのことに安堵しつつも俺は途方にくれた。ヨハンの背負っていたものにも、それにずっと気付かなかった自分にも。 ヨハンが<破滅の光>に従う行動をとっていたのはすでにわかっていたことだ。わかった上でヨハンには問わなければならないし、理由はどうであれ、そのことを赦してはいけいないのかもしれないとも思っていた。でも現実は想像以上にキツくて子供みたいに泣き喚きたい気分になった。 無力感で黙り込んだ俺に、ヨハンは座り込んだまま言った。 「言い訳はしない。俺が十代に黙っていたのは、お前の為じゃない。俺が十代に知られたくなかったからだ。俺はお前を裏切った。自らの意思でお前を傷つけた<破滅の光>に従い、真実を知りたいと願ったお前に嘘を吐いて」 「ヨハン・・・・・・」 「全てを知ったお前に責められても仕方ない。そう思いながらもどうしても言えなかった。それは俺の弱さだ」 それははじめて見るヨハンの暗い顔だった。ヨハンは勘に頼りがちな俺と違って頭がいいから、その分余計なことまで考えて自分を責めていたんじゃないだろうか。 「幻滅しただろ?俺も、自分を軽蔑した。俺はお前に対していつでもまっすぐ誠実でありたかった。そうすることでお前の横に立つことが許されるような気がしてた。だけど・・・・・・・こんな俺に十代を望む資格なんてなかった」 ヨハンはそんな気持ちを抱えてずっと俺のそばにいたのだ。その孤独を思うと胸が痛くて仕方がなかった。勢いに任せて殴った拳なんかよりずっと。 吐き出すようにそう言った後、碧色の瞳を細め、床をにらみつけながら自嘲の笑みを浮かべるヨハンを、俺はいつかそうしてくれたように抱きしめた。 「もういい、もういいから・・・・・・」 「十代・・・・・・」 俺はヨハンを赦そうと思った。そして、しっかり捕まえて連れて帰ろうと思った。ジムが言ったように。 「本当にバカだよ、大バカ者だ・・・・・・けど、ヨハンにそうさせたのは他の誰でもない、俺だ。すまない・・・・・・でも、俺が必ず<破滅の光>からレインボー・ドラゴンを解放する!だから・・・・・・!」 「十代・・・・・・っ!」 背中にまわされたヨハンの手も肩口に触れる呼吸も熱くて、少し震えていた。もしかしたら泣いているのかもしれない。そういえば俺の前で泣いているヨハンなんて一度も見たことなかった。いつでも前向きで、それでいて冷静で、だからこそ人から期待されることも多かっただろうし、それに答える能力も持っていた。けれど、それと引き換えにヨハンは多くのものに耐えていたに違い。 俺も無自覚にヨハンにそれを期待していたかもしれない。俺の理想を押し付けていたかもしれない。その理想は俺の思うよりずっと潔癖な気はするけど、いつのまにかヨハンがそう受け取っていたのだとしたら随分苦しいものだっただろう。本当の俺は自分勝手な気分屋で、能天気な根性無しで、どうしようもないヤツなのに。 ヨハンと出会った頃の俺にはそんなこと想像すらできなかったけど、今の俺にはそれは随分重いものだと知っていた。そして、自らの罪を理解し、自らを罰している者に必要なのは、罰よりも赦しだということも知っていた。 だから今のヨハンに必要なのは赦しだ。 だからこれでよかったんだと思った。 そうやってしばらくヨハンの体温と鼓動を感じていると、その鼓動と重なるように規則正しく響いていた起動音が、ゴウンと大きな音と振動をたてた。 その途端、頭の中が真っ白になる。 「・・・・・・・・・・・・う・・・だい!十代!」 「・・・・・・よは、ん・・・」 ヨハンの声と体温を感じて重い瞼を持ち上げると、心配そうに覗き込むヨハンの顔がぼやけて見える。どうやら意識を失っていたらしい。なぜか身体が感電してしまったように、痺れていてピクリともしないし感覚も遠い。声が上手く出ない。突然意識が途切れてしまった所為か、頭もぼおっとして現実感がない。 いったい何が起こったのだろう。鈍い頭で考えていると、その答えをヨハンがくれた。 「D・D・Gの停止がはじまったらしい。まだ第一段階で、完全に停止させるまでには時間がかかるはずだけど・・・・・・」 そうだった。三沢がシステムを止めようとしているんだった。 俺を生かしているのが<破滅の光>にしろ虹龍にしろ、D・D・Gを介していることに変わりはなく、その所為でまた倒れてしまったのだろう。システムを停止させることで、何かしらの影響はあるだろうとは思っていたが、完全に停止させた時のことを考えるとさすがに気が重くなった。それ以前にこんな調子で<破滅の光>と向かい合うことができるのか疑わしい。なのに身体を支えてくれるヨハンの腕が温かくて安堵する。きっと何とかなるさと根拠の無い奇妙な自信が湧いてくる。 何度目になるのかもうわからないけど、こうやって俺を支えてくれるのはいつもヨハンだった。ピンチの時に駆けつけてくれて、脅威に対して共に立ち向かってくれて、時には身を挺して庇ってくて、安心して背中を任せられる存在。そんなヤツ他にはいなかった。だからつい頼ってしまう。甘えてしまう。今だってそうだ。 「・・・・・・わりい、な」 こんな時に動けない情けなさとか、大切に扱われることに対する照れくささも手伝って苦笑いすると、ヨハンは抱える腕に力を込めた。その顔に浮かんでいたのは、すべてのことを甘受し許そうとする慈悲に満ちたものだった。 「もう、いいよ。戦わなくていい、頑張らなくていい」 「よは・・・・・・?」 「お前の分まで俺が戦ってやるから。だから、もういいんだ」 そんなふうに言ってくれるのもヨハンだけだ。だけど、俺にも僅かなりとも誇りってヤツがある。それを投げ出すつもりはないから「・・・・・・でも・・・おれ、は・・・」と擦れる声で答えたら、ヨハンの顔がくしゃりと歪んだ。その綺麗な碧色の瞳には再び恐れが浮かんでいた。 「俺はこれ以上十代が苦しむ姿を見たくない。二度とあんな思いしたくない。お前を失うのは嫌なんだ・・・・・・!」 「ご、め・・・・・・」 俺も異世界でヨハンやみんなが消えてしまったと思った時、何もわからなくなってしまった。先が見えなくなってしまった。ヨハンにそんな思いをさせまいと離れたことが、逆にヨハンをより苦しめることになってしまったのだとしたら、本当に申し訳ないことをしたと思う。今更だけど、これ以上心配かけまいと痺れたままの喉を凝らした。 「・・・・・・も・・・だいじょ、う・・・・・・」 「全然大丈夫じゃない!お前いつも何も言わずに、勝手に行っちまうんだ。俺の気持ち知ってても、知らん振りして置いてっちまう・・・・・・」 いくつか思い当たることがあって言い返せない。ヨハンだけじゃない。みんなにも同じこと言われた。それでも言い訳がましく口を開こうとしたらヨハンのそれに塞がれた。力の入らない俺は、ヨハンの求めるままにそれを受け止める。入り込んで来た舌で口蓋を撫でられて、痺れの奥に熱が広がると何も考えられなくなる。そのまま身を任せて、ヨハンの与えてくれる感覚だけを追って、やがて息が切れて苦しくなった頃、ようやく離れてくれたヨハンが、いつの間にか零れて俺を濡らしていた唾液を拭いながら、耳元で囁くように言った。 「こうやって捕まえてても、すぐに俺の手の中から抜け出してくんだ。よくわかったんだ」 『よくわかってる。何度も何度も繰り返してきた』 よはんの声をとおくにききながら、なんども大きく息をすいこんだけど、さんそが足りないのか、あたまがくらくらする。 「だから決めたんだ。お前を失わない為なら、俺はどんなことだってするって」 『どんなことだってする。今度こそ失敗しない』 「・・・よ、は・・・・・・」 いたいぐらいの力でよはんはおれを抱きかかえている。もう逃げたりしないのに。 「俺はお前がいない世界なんて考えられない。愛してる。」 『愛してる。お前のいない世界なんていらない』 「おれ・・・も・・・・・・」 おれもだ。 よはんのいないせかいなんてかんがえられない。 よはんがいないせかいなんていらない。 「何も心配いらない。十代の全て、俺に委ねて」 『俺に委ねて。全て忘れて、俺のことだけ見て』 「・・・・・・ん」 よはんにならまかせてもいい。 そうおもったそのとき、おれをよぶあいぼうのこえがきこえた。 『・・・・・・クリクリ〜!』 「・・・・・・・・・・・・?」 よはんのかたごしにうかんでみえる、なみだをうかべたあいぼうのすがたがかすんで、ひかりのなかにとけるようにきえてゆく―――― 「あいぼう・・・・・・っ!」 俺はジタバタと暴れて身を捩り、驚くヨハンの腕の中から抜け出すと、必死に声を上げるハネクリボーに手を伸ばして、具現化されたままのフサフサの身体を捕まえた。一瞬とはいえ消えていくように見えたから、ちゃんと触れることが出来て俺は安堵する。 『クリクリ〜』 「よかった・・・・・・あのまま、消えちまうのかと思った」 嬉しそうな相棒を確かめるように撫でていると、酷い痺れがとれていることに気づいた。それだけじゃない。それまで熱に浮かれるようにぼやけていた世界が、熱が去った後ようにすべてがクリアに感じる。そこで、冷えた頭に強烈な違和感が襲ってきた。 俺は、今、何を考えていた? まるで眠りにつく直前のような心地よさで、その時は疑問にさえ思わなかったが、自分の考えていたことを思い返して呆然とした。 よはんがいないせかいなんていらない。 よはんにならまかせてもいい。 それはもしかしたら俺の心のどこかにある願望なのかもしれない。けれど、そう考えた時の俺は明らかにおかしかった。まるで何かに誘導されるようにそう考えていた。正気だったとは思えない。挙動不振な俺の言動にヨハンは不安になったのだろう。慌ててこちらに近づいて来る。 「十代?急にどうしたんだよ?」 「俺、おかしい・・・・・・今、おかしなこと、考えてた・・・・・・!」 「何言ってるんだよ、お前はどこも、」 「来るな・・・・・・っ!」 伸ばされたその手を振り払って、力の入らない身体を無理やり引き摺りヨハンから遠ざかる。拒否されたことがショックだったのか、ヨハンはその手を空に彷徨わせたまま、悲しそうな表情を浮かべていた。その姿に胸が痛んだが、ヨハンとの距離をとる為に折れそうになる腕で上半身を支えつつ必死で這って行く。 「十代?」 「・・・・・・俺、絶対まともじゃない。ヨハンに何するかわからない・・・・・・!」 今ならはっきりわかる。まともじゃない。もしかしたら・・・・・・いや、恐らく。俺は<破滅の光>に支配されて、今にも自我を失おうとしているんじゃないのだろうか?もし、それが疑いでは済まないとしたら。自我を失って<破滅の光>に従うことになったら。まず操られた俺は何をするか。 ここにいるのはハネクリボーにユベル、そして虹龍とヨハン。 それは明白だった。 「大丈夫だ、お前はまともだよ。何も心配することない。だから、」 「ダメだ!」 安心させようと微笑みながらゆっくりこちらに近づこうとするヨハンを俺は止めた。もちろんヨハンはそれぐらいで足を止めようとはせず、地べたを這いずるぐらいじゃたいして広がっていない俺との距離を縮めようとする。 そこで俺の側で成り行きを見守っていたハネクリボーが、近づいてくるヨハンと俺の間に立ち塞がった。そしてルビーが俺の後ろから肩越しにヨハンを睨みつけている。その姿が再び俺とヨハンの幼い姿と重なって見えた。 「相棒?ルビー?いったい、どうしたんだ?」 『クリクリ〜!』 『ルビビ!』 困惑する俺に二人?は必死に『十代はおかしくない』と訴えた。 「でも、じゃあ、今のは・・・・・・?」 自分自身さえ信用できず、何を信じればいいのかわからなくなったその時、俺の肩に掛けた手にギュッと力を入れるルビーの様子に、今更なことを気づいた。 「・・・・・・ルビー?どうして、ヨハンのところへ行かないんだ?」 なぜそんな当然のことに気づかなかったのだろう。それは病室で宝玉獣達がいないことに気づかなかった時と同じ盲目さだ。それだけじゃない。虹龍が召喚されていて他の宝玉獣達の姿はないのに、どうしてここにルビーだけが残ってるんだ? 止まりかけた思考が再び回り始める。 おかしいのは俺?それとも、まさか・・・・・・。 一度は消えた疑惑が再び頭を擡げ出して、その疑惑の元に視線を向けた。 「ヨハン・・・・・・おまえ、まだ黙ってることがあるんじゃないのか?」 「十代?何言って、」 「何か、俺に隠してることがあるんじゃないのか・・・・・・!?」 そう言った直後だった。何が切っ掛けだったのかわからない。それまで光の鎖に囚われ、眠ったように身動きひとつとらなかった虹龍が、突然咆哮を上げると力尽くでその鎖を引き千切った。 「レインボー・ドラゴン・・・・・・!?」 ヨハンから離れようと囚われた虹龍の方に這っていた俺は、あっと言う間に自由になった尾に捕まり持ち上げられた。虹龍の意図を推し量ることができず戸惑っていると、ヨハンは顔色を変えて叫んだ。 「・・・・・・やめろ!やめるんだ!!!」 「?」 ヨハンが何を止めようとしているのか考える暇はなかった。虹龍が再び咆哮を上げて空気を震わせ、放った七色の光がその空間を飲み込んだ。 |
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